第1話

みんなでいることが、いちばん幸せだった

望月香織が育った家庭は、

人を安心させる空気。

人を包み込む空気。

家の中に入ると、

どこかほっとするような、

そんな空気だった。


父は大手家電メーカーに勤める会社員だった。

毎朝、まだ空が暗い時間に家を出る。

朝5時。

まだ街が静まり返っている時間。

父は黙って身支度を整え、

静かに玄関を出ていく。

帰ってくるのは夜。

8時。

9時。

それでも、父は弱音を吐かなかった。

「仕事やからな。」