望月香織が育った家庭は、
人を安心させる空気。
人を包み込む空気。
家の中に入ると、
どこかほっとするような、
そんな空気だった。
父は大手家電メーカーに勤める会社員だった。
毎朝、まだ空が暗い時間に家を出る。
朝5時。
まだ街が静まり返っている時間。
父は黙って身支度を整え、
静かに玄関を出ていく。
帰ってくるのは夜。
8時。
9時。
それでも、父は弱音を吐かなかった。
「仕事やからな。」